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社員の多くが業務の進め方を当然と思っていませんか

 日野自動車は1999年3月期に426億円の経常赤字に転落しました。そこで、2001年、トヨタ自動車は日野自動車を子会社化し、トヨタ自動車の副社長だっ蛇川忠暉(じゃがわ・ただあき)氏を派遣しました。
 日野自動車の2004年3月期は、排ガス規制による特需による効果もあり、売上高は同社初の1兆円、経常利益375億円になると言われていました。

 業績が良くなったのは、「改善できる『宝の山』があったから」(蛇川社長)です。では、なぜ改善の余地が多かったのでしょうか。

 それは「改善は内部からでは難しい」からです。

 まず、内部にいる社員は、今までのやり方を「こんなものだ」と思っているからです。新入社員の時はいろいろと疑問を持ちます。仕事のやり方に疑問を持つ人もいます。しかし、そのような疑問を口にすると「まず、仕事を覚えろ。仕事の改善は一人前になってからだ」と言われるのです。新入社員は仕事のやり方に疑問を持たないようになっていくのです。

 この「当然という意識」を変えるためには「問題解決」の研修が必要となります。
 しかし、単なる「問題解決」の研修では、「知識は得たが実行されない」、という状態になります。「問題解決」をするためには、まず「問題意識」があることが必要だからです。
 もちろん、問題意識を持つためのスキルも与えることになります。しかし、そのスキルを使って問題であるという認識を得たとしても、次に「改善は誰の仕事か」という問題が出てきます。
 改善活動には時間が必要となります。ルーチンワークを行なっている社員が改善を行なおうとすると、「それはお前の仕事なのか、改善よりも、ルーチンワークを滞りないように行なえ」と言われる怖れもあるのです。
 単なる「問題解決」の研修では改善は難しいのです。
 
 また、改善が内部からでは難しいというのは、次のような事情があるからです。
 今までのやり方を変えるということは、今までのやり方に問題があったということを指摘することでもあるからです。ところが、今までそのやり方をやってきた人が上司になっている場合が中小企業では多いのです。改善するということは、今までの上司のやり方を否定することになるのです。
 なにより、今までそのやり方で行なわれてきて、それほど問題がなかったのです。他の人はこんなものだと思っている。その状態にわざわざ波風を立てようとする人は出てこないのです。波風を立てようとすると、いろいろなしがらみが出てきて問題が複雑になり収拾が取れなくなるからです。

 例えば、玩具メーカー・バンダイは97年に約20年間続いた山科体制が終わり、新たにトップとなった茂木隆氏が2年連続の赤字決算によりトップを交代した時のことです。次の社長と予想されていた創業以来最古参である杉浦幸昌氏は、自分ではなく、96年に三和銀行から転職した高須武男氏を指名したのです。
 杉浦氏が自分が社長にならなかった理由として「作った人は壊せない」と言ったのです。しがらみがあまりにも多すぎるからです。

 このような理由で、改善が行なわれないで問題が山積みになっていくのです。

 しかし、このような問題は外部から見ると分かりやすいのです。
  内部の人間は「このようなものだ」と思っているのに対し、外部の人間は「先入観」がないからです。
 また、内部の人間はしがらみがあるのに対して、外部の人間にはしがらみがないからです。

 会社再建を行なう場合に、外部から招聘されて成功する場合が多いのはこのためです。

 内部の人間がいかに「当り前だ」と思って疑問を持たないものかについては、次の日野自動車の例を見ても分かります。

 トヨタ自動車副社長から日野自動車社長に就任して1年ほどしてから、蛇川忠暉社長が完成した車を置いておくモータープールを訪れた時のことです。トラックが6,000台も並んでいたのです。
 トラックは9月と3月に大部分が売れ、他の月は赤字なのです。そのために、どんどん在庫を溜め込んで、9月と3月に間に合うように生産していたのです。在庫をしないと9月、3月の販売に対応できないと考えていたからです。
 そこで、蛇川社長は2003年から受注生産に切り替えたのです。その結果、在庫は3,000台から400台ほどに減ることになったのです。

 生産現場でも稼働率が低い設備が多かったのです。
「それなら類似部品を作っているものを寄せ集めろ。そうして80%越えをやれ」と蛇川社長は指示したのでした。

 部品の品番にしてもそうです。
 日野自動車では作っているトラックの種類が多く、部品も多かったのです。
60年分の品番がたまっていて、なんと300万点となっていたのです。現在それを減らす活動をしています。

 エアコンにしてもそうです。トラックは積載量によって大型、中型、小型に別けていますが、それぞれに専用のエアコンを使っていたのです。それを乗用車のエアコンを付けることにしたのです。トラック専用のエアコンなど必要なかったのです。

 モデルチェンジにしてもそうです。
 トラックのフルモデルチェンジは12年とか13年とかが当り前と思っていたのです。モデルチェンジは金がかかるからという理由です。しかし、乗用車は5年間隔で行なっています。また、サイクルが長いとコストダウンの機会を逃すことにもなるのです。

 蛇川社長が行なったのは、「会社が抱える問題点を整理し、働く者の意識を変え、現場を動かす」という基本を忠実に行なったことです。社員の意識を変えるために、気がついたことをその場にある紙に書き、担当者に送り付けることを行なっています(「赤紙」と呼んでいます)。

 こう見てくると、社員の意識改革には働きかけることが必要であるということです。社員に質問をする、社員に要求する、ということです。

 東芝を立て直した土光さんのクイック・レスポンス(質問に対し、即時に応答すること)、松下幸之助さんの「社員に要求する」というものも同じです。社員に質問・要求して問題意識を持たせることが有効であるということです。

 中小企業が改革を行なうには、しがらみがない人が必要です。
 トップが不退転の決意を示してプロジェクトを作って直接指揮できれば可能でしょう。しかし、そうでなければ外部のコンサルタントを活用したりするのが有効です。

 御社では、今の業務の進め方を当然と思っている社員が多い、というようなことはなかったでしょうか。
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参考資料:日野自動車について・バンダイについて
     日経ビジネス 2004年2月23日号

※今回のレポートは、『まぐまぐプレミアム版』
 実践!経営アップメール・プレミアム【第47】[2004/08/10]
 に掲載した記事を掲載しました。

(経営コンサルタント 山田勉)

※ここに掲載したレポートは、
メルマガ「実践!経営アップメール」「会社の◆経営体質を診断する!」
配信したものの一部を掲載しています。
レポートの内容は、最初に公開した当時のまま掲載しています。

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